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2020.4.24 更新

新型コロナウイルス感染症拡大下でのスーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア業界などの事業展開に関する仮想Q&A

根本 重之
公益財団法人流通経済研究所 理事/拓殖大学 名誉教授

 先行きが見えにくいところですが、表題に挙げた小売業、そこに商品を供給するメーカー、卸売業などの皆様にご覧頂くことを想定し、当面の事業環境の変化、対応のあり方などについて、現段階で可能な範囲で整理を試みました。
 いくつかはここのところ実際に頂いたご質問もあり、Q&A方式で、箇条書きにしてあります。
 新たな動きや情報がつぎつぎ出てくるところ、あくまでも4月23日(木)時点のものであり、悲観に押しつぶされることを回避するため、楽観的な見方をやや強めに打ち出した部分もあるので、そうした点、ご注意のうえ、批判的にお読み下さい。

●ではまず新型コロナウイルス感染症の今後、そして緊急事態宣言はどうなると見ているか

-外出規制等は、医療崩壊回避を主目的に行われており、抗体を持たない未感染者=感染しやすい人を極力多く残そうとするわけだから、緩和されれば、再流行のリスクがあると見ておきたい。
-緊急事態宣言は状況によって延長もあるだろうし、措置が一度停止あるいは緩和されても再度発令されたり、緩和が強化されることもありうると思っている。
-“三密”の度合いが高いとして、夜の街は相当期間営業自粛要請の影響を受け続けそう。
-09年の新型インフル・パンデミック時、日本は春の第1波抑え込みに成功したが、夏休みになり、人の移動が活発になったことが秋冬の再流行を招いた一因とされているようだ。このことから、今回も、ゴールデンウィークだけでなく、夏休みの移動にも制限がかかる可能性あることも想定しておきたい。
-そして新型コロナウイルスが、それほど重篤にはならい従来からの「風邪のコロナウイルス」同様、冬に強い感染力を示すようだと、この秋冬、再流行のおそれがある。
-ワクチン、治療薬の開発、そして十分な生産・供給によって打ち勝てるようになるといいが、大方の専門家の意見に従い、それには1年半程度はかかると見ておきたい。
-そうだとすると、延期された東京オリンピック・パラリンピックの実施にも暗雲がかかるということになってしまう。

●最近アメリカで抗体検査を行ったところ、公表されている感染者の10倍、50倍の感染者がいるといった推計も出されているが、これについてはどう見るか。

-ニューヨーク州で無作為抽出した3,000人に抗体検査をしたところ、13.9%が陽性であり、州の人口をもとに拡大推計すると、約270万人が陽性となり、公表感染者数の10倍強になるとのこと。カリフォルニアでの同様の調査では、28~55倍とも。
-日本でも、4月中旬、慶応大学病院が新型コロナ感染症以外の治療目的で来院した無症状患者67人にPCR検査を行ったところ、4人(5.97%)が陽性者、「市中で感染したものと考えられ、地域での感染の状況を反映している可能性がある」とした。
-こうした調査は、新型コロナウイルスが強い感染力をもつことを示すとともに、逆に感染者ベースの致死率は十分の一、あるいは数十分の一に一気に低下し、その重篤性は今考えているレベルよりずっと低くなるということも示していることにも注意したい。
-こうしたことが明らかになってくると、社会が問題を冷静に受け止められるようになるだろう。そうなることで各種の規制も合理的なものになり、経済への悪影響が緩和されるといいと思っている。
-逆に言うと、医療体制等が不十分であることもあり、今われわれは、感染爆発による医療崩壊、そして自分や家族がかかれば、死ぬかもしれないという怖さゆえの不安爆発状態に置かれていると見ておくことも必要なのではないかとも思う。
-ちなみに09年新型インフル・パンデミック時も、ウイルスの重篤性が低いことが判るにつれて、社会的な一種のヒステリー状態、過剰反応は収まった。
-また、英インペリアル・カレッジ・ロンドンの推計による、感染者ベースの致死率は年齢によって大きな差があり、9歳以下0.002%、10代0.006%、20代0.03%、30代0.08%、40代0.15%、50代0.60%、60代2.2%、70代5.1%、80歳以上9.3%となっている。もちろん年代だけでは切れないし、実施方法は難しいが、リスク細分型のアプローチができれば、各種規制の負の影響を縮小・軽減できる。
-また、結核は発展途上国の病気になったとしてBCG予防接種をやめている欧米主要国に対して、台湾、イラク、日本など、今も広く実施しており、とくに日本株ワクチンを使っている国は、感染の広がりが遅く、死亡率も低いことに注目している疫学者もいる。この見解は、まだ科学的に確認されていないこともあり、あまり報道されないが、日本は、台湾などとともに、欧米とは違う道を歩める可能性があることも、頭のなかに置いておきたい。
-いずれにしても一定の長期戦を覚悟した方がいいと思うので、初戦は重要だが、そこで息が上がってしまうことは禁物であり、持久力を維持したい。

●IMFの経済予測をどう見るか

-今年マイナス、来年は回復とのベースシナリオは、深刻なのは4-6月期までで、年後半は感染抑制策が徐々に緩和されるとの前提を置いており、楽観的なシナリオだと見ておきたい。
-そのためIMFは、「今年の7-9期までは終息しない」、「来年再発が起きる」、そして「その双方が起きる」という3つのリスクシナリオを用意している。うまく、早めにおさまってくれるといいのだが、3番目の可能性も視野に入れておくべきだろう。その場合、今年も来年もかなり厳しいマイナス成長ということになる。
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