ISSN 2433-9784(オンライン)
ISSN 0389-7672(冊子版)
「流通情報」は、流通経済研究所の機関誌として1967年に創刊した雑誌です。現在隔月刊で発行しておりますが、流通・マーケティングの専門誌として評価をいただいております。内容は、流通・マーケティング関連の最先端の論文や、当研究所の研究報告、業界動向を流通・マーケティングの視点から抄録したもの等を掲載しています。
隔月刊:年6号発行、A4版 約100頁
年間購読料:30,000円(税込33,000円)[Web誌面閲覧サービス含む]
※2017年1月発行号から最新号までの論文・記事がPDFで読み放題
吉間 めぐみ
公益財団法人流通経済研究所 上席研究員
小林 哲
大阪公立大学 経営学研究科 教授
本稿は、地域活性化策として注目されている地域ブランディングについて、その研究の系譜を整理し、今日的課題を示すことを目的としている。ビジネスにおけるブランド研究と密接な関係にある地域ブランド研究は、日本と海外で、その内容が大きく異なる。本稿では、この2つの地域ブランド論が相互補完関係にあることを踏まえ、両者を接合した「統合地域ブランディング」の枠組みを提示する。また、統合地域ブランディングの例として、汎用型地域ブランドを活用した地域ブランディング政策や、地域ブランディングにおける食関連資源の有用性について議論する。最後に、地域ブランディングの実務における今日的課題を5つ提示する。
キーワード: 地域活性化、地域産品ブランディング、地域空間ブランディング、統合地域ブランディング、汎用型地域ブランド勝見 一生
新潟大学 社会連携推進機構 地域協働部門 准教授
本研究は、70年以上の歴史がある「新潟県産コシヒカリ」、近年めざましい成長を続ける「北海道産ゆめぴりか」と「山形県産つや姫」の3品種を事例に、それぞれのブランドの価値としての地域の重要性を示すものである。本研究では、各ブランド米の供給主体、消費主体、BIT(Brand Incubation Third-party)へのインタビューにより抽出したブランド価値に関する言葉と、インタビューの内容を用いて研究を展開した。本研究の結果、各ブランド米におけるブランド価値のうち地域に関する価値は高い割合で抽出され、ブランド価値において重要な要素であることを示した。
キーワード: ブランド価値、ブランド価値協創、共起ネットワーク、地域産品、ブランド米佐古 典子
千葉市 経済農政局農政部農政課流通支援班 主査
産地と消費地の両面を合わせもち、首都圏の一部として発展してきた千葉市は、これまで際立った特産物や名産品が少なく、豊富な食関連産業を有しながら地域内の連携が十分だったとは言えない。そこで、東京に近い生産地「千葉市」からプレミアム感のある生産地「千葉市」の確立に向けて立ち上げた地域ブランド、「千葉市食のブランド『千』」は、特定の品目でのブランド化ではなく、千葉市の食や食文化を理解してもらえるような「コンセプト」で多種多様な商品等をくくり、そのイメージをブランドとして、千葉市の産品全体の高付加価値化を目指すものである。
キーワード: ブランドコンセプト、農業の成長産業化、ブランド認定制度、ブランド販路拡大、ブランド認知向上前田 益司郎
昭和女子大学 現代ビジネス研究所 研究員/株式会社ルノア 代表取締役
現代の情報社会において、地域ブランドのプロモーションは従来のマス広告からデジタルを活用することで効率化できると考えている。しかし、デジタルを活用したプロモーションであっても、地域ブランドの特性や価値を明確にし、消費者調査や分析を行うことは重要であり、これは伝統的なマーケティングの要諦と何ら変わらない。このマーケティングの原則を踏まえつつGoogle広告やMeta広告等のデジタルプラットフォームを活用したプロモーションを実践した事例の紹介と、今後の技術革新がプロモーションに与える影響について考察する。
キーワード: 地域ブランド、デジタルプラットフォーム、オンライン広告、ターゲティング、広告効果梅村 幸子
公益財団法人流通経済研究所 研究員
本稿では群馬県産の梅の認知拡大のため、群馬県のカリカリ梅のブランディングを実施した事例を紹介する。消費者調査及び事業者ヒアリングを実施し、カリカリ梅が消費者から求められる状況を分析したところ、「リフレッシュ」したいときに適することが明らかになった。さらに、どのように消費者に対してカリカリ梅を用いたリフレッシュを的確に訴求することができるのかについて調査研究を進め、受験生やビジネスマンなどプレッシャーがかかる人達に対する「リフレッシュ」と位置付けた。よって受験生向けについては、カリカリ梅と受験生のイメージを無理なく結びつけるために、カリカリ梅に合格祈願や縁起物といったストーリー性を持たせたプロモーションを試験的に実施し、カリカリ梅の新たな需要の可能性を見出した。
キーワード: 地域ブランディング、地域産品、オケージョン、消費者調査、因子分析吉間 めぐみ
公益財団法人流通経済研究所 上席研究員
本稿は、全国各地で展開されている「地域ブランド」の実態を整理し、その傾向と課題を明らかにするものである。筆者のこれまでの地域ブランド立ち上げ・運営経験を踏まえ、地域ブランドを「モノ・サービスのブランド」と「まちづくりのブランド」に分類し、それぞれの特徴や成功事例、陥りやすい課題を提示する。特に「誰のためのブランドか」という本質的な問いや、消費者ニーズとの乖離、ブランド構築に要する時間とPR活動との混同、運営主体の不在、そしてインナー・アウターブランディングの難しさなど、地域ブランドが直面する5つの主要課題を詳述する。また、近年沖縄県で策定された「おきなわブランド戦略」を事例として取り上げ、まちづくり型ブランドの可能性とその構築プロセスについて具体的に解説し、今後のブランド戦略に資する提言を行う。
キーワード: 地域ブランド、ブランド戦略、消費者ニーズ、おきなわブランド、ブランド・エクイティ・ピラミッド寺本 高
公益財団法人流通経済研究所 客員研究員/中央大学 商学部 教授
渡辺 達朗(公益財団法人流通経済研究所 理事/専修大学 商学部 教授)
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