ISSN 2433-9784(オンライン)
ISSN 0389-7672(冊子版)
「流通情報」は、流通経済研究所の機関誌として1967年に創刊した雑誌です。現在隔月刊で発行しておりますが、流通・マーケティングの専門誌として評価をいただいております。内容は、流通・マーケティング関連の最先端の論文や、当研究所の研究報告、業界動向を流通・マーケティングの視点から抄録したもの等を掲載しています。
隔月刊:年6号発行、A4版 約100頁
年間購読料:30,000円(税込33,000円)[Web誌面閲覧サービス含む]
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鶴見 裕之
公益財団法人流通経済研究所 客員研究員/横浜国立大学 国際社会科学研究院 教授
廣瀬 涼
株式会社ニッセイ基礎研究所 生活研究部 研究員
本稿は、Z世代のタイムパフォーマンス(タイパ)を、従来の「時短」概念だけでは捉えられない多面的な行動原理として検討する。Z世代は、膨大な情報環境と限られたリソースの中で満足度を最大化するため、「わざわざ消費する価値があるか」を基準に優先順位づけを行い、失敗回避型・状態到達型・時短型という複数のタイパを状況に応じて使い分けている。購買では失敗という最大の時間損失を避けるために慎重な情報収集を行う一方、社会的つながりを目的とした消費では“消費した状態”に最短で到達する行動が選択される。消費の達成は、対象の取得そのものではなく、消費行為を通じて望ましい状態へ到達するプロセスに価値が見いだされる。
キーワード: 消費に失敗したくない、わざわざ、脱タイパ、リキッド消費、Quality of Consumption鈴木 雄高
公益財団法人流通経済研究所 特任研究員/市川マーケティング研究所 代表
本研究は、現代の消費行動において重要性を増す「タイパ(時間効率)」志向を背景として、買物における消費者の時間意識の差異と、その規定要因、および小売店舗が取るべき顧客体験の方向性を明らかにすることを目的とする。全国の20歳〜79歳の男女6,480名を対象としたインターネット定量調査データを用い、性別、年代、スーパーマーケット利用頻度、買物に対する感情的態度と、買物における時間意識の関連性を、クロス集計、カイ二乗検定、および調整済み残差分析により検証した。
分析の結果、性別、年代、利用頻度と時間意識の関連性は弱いものの、買物に対する感情的態度と時間意識の間には有意な関連が認められた。具体的には、買物を「楽しい」と感じるポジティブ感情層は「じっくり時間をかけて買物したい」傾向が高く、買物を「つまらない」と感じるネガティブ感情層は「迅速に買物したい」傾向が高いことが示された。以上の結果から、買物に対する関与の高さが、時間意識の差異を生み出す主要因であることが示唆される。
これらを踏まえると、小売店舗は消費者の買物意識を踏まえて、顧客体験を設計することが重要である。具体的には、効率性を追求する「迅速層」に対しては、動線最適化やデジタル技術を活用した時間的コストの最小化を、体験価値を重視する「じっくり層」に対しては、試食や専門接客といった快楽的価値の最大化を図るといった対応を推進すべきである。
鶴見 裕之
公益財団法人流通経済研究所 客員研究員/横浜国立大学 国際社会科学研究院 教授
Z世代は時間効率を極限まで追求する一方、推し活には睡眠時間を削るほどの没入を見せる。本稿はこの「タイパの逆説」を、メディア環境の構造変化と社会学者ローザの「共鳴」の概念を手がかりに解明する。まず、検索が担っていた機能が3領域に解体されつつある現象を整理し、Z世代の受動性と能動性の極端な非対称を示した。その上で、効率の追求(防衛)と没入(投資)が独立した行動ではなく、防衛が共鳴のためのエネルギーを蓄え、共鳴への渇望が防衛を駆動するという循環構造をなしていることを論証した。この力学に基づき、「信頼・文脈・効率」の3つのマーケティング戦略を提言する。
キーワード: タイパ(時間効率)、推し活、共鳴、防衛と投資、Z世代白鳥 和生
流通科学大学 商学部経営学科 教授
タイムパフォーマンス(タイパ)は単なる「時短」ではなく、生活者が嫌う手間や迷い、待ち時間を減らし、納得できる時間の使い方を実現する「時間価値」である。本稿は、タイパ志向が一枚岩ではなく分化している点を踏まえ、メーカーによる工程設計(再現性・失敗回避・栄養摂取の効率化)と、小売による購買体験設計(導線・会計・選択支援)という2つの競争軸を整理する。具体事例とデータに基づき、タイパ市場の現在地と実務上の示唆を提示する。
キーワード: タイパ、時間価値、失敗回避、購買体験設計、セルフ化佐々木 舞香
公益財団法人流通経済研究所 主任研究員
石橋 敬介
信州大学 経法学部 准教授
久保田 進彦
青山学院大学 経営学部 教授
鶴見 裕之
横浜国立大学大学院 国際社会科学研究院 国際社会科学部門 教授
菊地 昌弥
桃山学院大学 ビジネスデザイン学部 教授
尾崎 幸謙
筑波大学大学院 人文社会ビジネス科学学術院 ビジネス科学研究群 教授
本研究では、日本国内の自治体が農産物のブランド力向上を図っている現状を踏まえ、ブランド力に関わる要因として地域イメージの影響を検証した。既存研究は地域イメージが消費者の知覚品質やブランドへの態度に影響することを明らかにしてきたが、ブランド力自体への影響は分析されておらず、農産物の特性も考慮されていなかった。そこで、先行研究をもとにブランド力及び地域イメージの構成要素を整理した上で、質問項目を作成し、消費者にWebアンケート調査を行った。
そして、ブランド力と地域イメージに関わる尺度について、信頼性と妥当性が満たされていることを確認した。最終的には、多母集団同時分析により分析を行い、地域イメージはブランド力と正の関係をもつことを示した。この結果は、地域イメージがブランド力に影響するという学術的な知見を得ただけでなく、実務において産地がブランド力を高めるための課題を見つけることにも利用できる。
新 雅史
流通科学大学 商学部 准教授
資料情報センター TEL:03-5213-4531(代表) FAX:03-5276-5457