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コラム

2017.11.6 更新

トラック事業者と荷主との契約ルールの変更について

加藤 弘貴
公益財団法人流通経済研究所 専務理事

トラック事業者の人手不足
 トラック事業者の人手不足が深刻になっている。厚生労働省「職業安定業務統計」によると、自動車運転手(含むパート)の有効求人倍率は、2014年度1.93倍、2015年度2.11倍、2016年度2.42倍と上昇しており、直近の2017年9月には2.80倍に高まっている。
 人手不足問題を解決するには、トラックドライバーの長時間労働や他産業に比べて低い賃金等の問題を改善する必要がある。そして、そのためにはトラック事業者の生産性向上と経営基盤の整備が不可欠である。

標準貨物自動車運送約款の一部改正
 こうした中、国土交通省はトラック事業者と荷主の契約書のひな形である「標準貨物自動車運送約款」を一部改正することとなった(11月4日より施行)。これによりトラック事業者と荷主との契約ルールの基本形が変わることとなる。
 改正のポイントは、運送の対価としての「運賃」と運送以外の役務の対価としての「料金」を明確に区分した点である。まず「運賃」は発地から着地までの貨物の場所的移動のみの対価と規定されている。その上で、それ以外の役務の対価が「料金」とされ、次の費目で構成されることが示されている(図表)。

注:○積込料・取卸料=貨物の車両への積込み、車両からの取卸しに対する対価
     ○待機時間料=発荷主・着荷主の責により待機した時間に対する対価
     ○附帯業務料=はい作業、荷造り、仕分、研修・検品、横持ち・縦持ち等の業務に対する対価
     ・標準貨物自動車運送約款の一部改正等についての詳細は、(公社)全日本トラック協会のホー
     ムページで説明されている。
     http://www.jta.or.jp/rodotaisaku/kyogikai/yakkan_kaisei.php

 トラック事業者は、11月4日以降、改正後の新約款を営業所に掲示するとともに、運賃・料金の変更届を各運輸支局に提出することが求められる。国土交通省から示された変更届の様式例には、積込料・取卸料の時間単価、待機時間料の時間単価、附帯作業料を実費として収受することが記載されており、各費目の料金を示すことが基本となっている。 トラック事業者は、新たな約款と運賃・料金基準に基づいて、荷主との契約を行うことが期待されている。

今後の課題
 今後、問題となるのは、荷主とトラック事業者との実契約を具体的にどのように見直すのかである。現状は運賃・料金の別建ての契約が行われていない場合が一般的である。そして、運送以外の積込・取卸、待機、附帯作業がどのように行われているか、その実態も必ずしも明らかではない。従来の契約との整合性も考えなければならない。実契約の見直しに向けて検討すべき課題は多い。
 製・配・販の荷主企業は、こうした状況を踏まえて、今後の物流政策を検討することが重要である。物流担当者のみならず経営層がトラック事業者の課題や行政の制度変更を十分理解した上で、発荷主・着荷主・トラック事業者の連携を図り、対策を講じていくことが求められている。

※弊所機関誌「流通情報」11月号では、特集「物流・ロジスティクス改革の方向性」として、物流問題について多角的に論じています。是非ご一読ください。
http://www.dei.or.jp/information/info01.php

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