出版・情報サービス

流通情報バックナンバー 2022年

No.557 | Vol.54 No.2(2022年7月発行)

特集 農業のEC新時代

特集にあたって

折笠 俊輔
公益財団法人流通経済研究所 主席研究員

青果物ECマーケットの現状と展望~生産者視点からのEC考察~

折笠 俊輔
公益財団法人流通経済研究所 主席研究員

 本稿では、マーケット拡大が続く青果物のECについて、ECサイトの運営形態から、モール型EC、産直型EC、仕入れ型EC、自社ECの4つに分類し、それぞれの特徴について論じたのち、その比較を行った。また、生産者視点で見た場合のECの意義を確認し、生産者の規模別、戦略思考別に考えることができるEC分類の利用の方向性について整理した。生産者の規模や、ECチャネルによる販売が自社売上高に占める比率をどれくらいにするのか、生産している品目構成はどうなっているのか、といった状況を踏まえ、生産者は戦略的にECを活用していくことが重要である。

キーワード: EC、インターネット販売、産地直売、販路拡大、アフターコロナ
農産物ECにおける品目の分類と品目別販売方策

石橋 敬介
公益財団法人流通経済研究所 主任研究員

 本研究では、農産物ECでの買い物を想定したアンケート調査により、品目の分類を行った。
 アンケートでは、「関与」「知覚差異」「支出の痛み」「品質バロメータ」という4点について調査する質問項目を設けて、品目ごとの特性を明らかにし、それを基にした分類を行った。具体的な研究成果として、例えばメロンや牛肉においては、消費者が他品目より深く情報処理を行うため詳細な情報提供が求められることや、ぶどう等では価格を手掛かりにした品質判断がされやすいことなどを明らかにした。この研究の成果は、生産者やEC事業者が取り扱う品目に合わせた販売を行う際に利用できるものである。

キーワード: 農産物EC、分類、関与、知覚差異、品質バロメータ
坂ノ途中のECを概観し、成長要因をさぐる

小野 邦彦
株式会社坂ノ途中 代表取締役

アブストラクト:
 坂ノ途中は、環境への負担の小さい農業を広げることを目標に、インターネット通販(以下EC)、法人顧客向けの農産物卸、東南アジアを中心とした途上国におけるコーヒー生産の品質向上及び輸入販売を行っている。
 なかでもECは売上全体の6割程度を占め、安定的な成長を続けている。ECの主力は、バリエーション豊かな季節の野菜を詰め合わせた「野菜セット」。古典的とも言える野菜の定期宅配をメインに据えたECが、なぜ成長を続けているのか、改めて分析してみた。

キーワード: 有機農業、農産物流通、サブスクリプション、サステナビリティ、社会的消費
農産物ECを通じたブランディング

菰田 央
東御こもだ果樹園 代表

 長野県東御市でぶどうの生産を行っている東御こもだ果樹園は2015年に新規就農者として営農開始し、今季2022年で8期目になる。営農初期は農協と個人顧客(電話、FAX、メールでの注文)のみの取引であったが、直近(2021年)は、農協出荷はゼロとなりECにシフトした。
 農協の下請けを卒業し、ECを通じて独自にマーケティング展開するためには、東御こもだ果樹園をブランディングし、販路を築き上げる必要がある。その過程の様々な場面における、判断→決断→施策→結果とその他データを交え、『農産物ECを通じたマーケティングやブランディング』について考察する。

キーワード: ブランディング、環境フットプリント、SDGs、環境負荷軽減、農業DX化
食品の購買とその産地への観光との関係に関する研究

中島 彰一
公益財団法人流通経済研究所 研究員

  Mansfeld(1992)の旅行目的地選択の概念モデルに基づき、食品の購買が旅行目的地選択における情報収集手段となり得ること及び食品の購買経験があることが旅行目的地設定における内発的動機となり得ることについて、地域特産品の購買に関する消費者アンケート調査を通じて検証を行った。なお、前者については、結果的に産地についての情報の蓄積につながっている可能性があることから、旅行目的地選択における情報収集手段となり得るといえ、肯定することができる。後者については、何がより強い動機となり得るかまでは判断できないが、少なくとも訪問経験の有無により、はっきりと結果に差異が生じていることから肯定することができる。

キーワード: 地域特産品、EC、実店舗、観光目的地選択、内発的動機

視点

青果物の包装が「減らす」に対応するためには

北澤 裕明
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門 上級研究員

新刊紹介

石原武政著『戦時統制下の小売業と国民生活』

渡辺 達朗
公益財団法人流通経済研究所 理事/専修大学 商学部 教授

資料紹介

海外の流通&マーケティング

流通データ

  • 主要経済指標
  • スーパーマーケット販売統計
  • 主要家計指標
  • コンビニエンスストア販売統計
  • 百貨店統計
  • ドラッグストア販売統計
  • 日本チェーンストア協会販売統計
  • 家電量販店販売統計
  • ホームセンター販売統計
  • 研究会・セミナーより
  • 新着図書情報
No.556 | Vol.54 No.1(2022年5月発行)

特集 日本のドラッグストア研究
-業界動向と顧客分析-

特集にあたって

山﨑 泰弘
公益財団法人流通経済研究所 常務理事

ドラッグストア成長機会の考察

山﨑 泰弘
公益財団法人流通経済研究所 常務理事

 ドラッグストア(DGS)1店舗あたりの人口を用いた店舗密度の観点から、成長機会について検討した。全国に店舗網が広がるDGSは顧客接点、販売拠点としての重要度が高まっており、上位企業の競争力は他業態を凌ぐものになっていくと考えられる。またDGSは、すでに日用品販売においては確固たる地位を築いており、今後の成長の鍵は冷蔵・冷凍食品を含む食品販売にあると考えられる。
 ただし、直近の出店ペースでは、近い将来に店舗数が飽和することが懸念され、さらなる成長を実現するためには、店舗の損益分岐点を下げることが必要になる。その方法として、顧客接点を活用したヘルスケアに関連したサービスや広告など物販以外の収益モデルを作ることや、製造小売として収益性の高い価値あるPB商品を開発することなどに可能性があると考察した。

キーワード: ドラッグストア、商業動態統計、地域別動向、店舗密度、購買パネルデータ
ドラッグストア業態の動向と商品構成の変化、および、企業戦略の方向性
 -ドラッグストア業態の展望と課題-

重冨 貴子
公益財団法人流通経済研究所 主任研究員/ドラッグストア研究会 主宰

 本稿では、ドラッグストア業態の直近の展開状況を概観し、商品構成などの質的な変化や、経営戦略の方向性、「新型コロナウィルス感染症」(COVID-19)流行の影響などを踏まえて、業態の優位性と課題点を検討した。ドラッグストア業態の食品・非食品の粗利ミックスによる収益モデルは優位性が高く、COVID-19流行下でも購買動向は安定的に推移し、主要リアル小売業態のなかで高い成長性を保っている。経営戦略の方向性(3タイプ)は時系列変化が小さく、ドラッグストアの取引先は、今後も各々の方向性に沿った営業提案を行うことが重要だと考えられる。今後は狭小商圏化の進行に伴い、各社がより一層効率化や収益性強化に迫られると予想される。食品強化は来店頻度や買上点数の増加効果をもたらす一方、同質化のリスクもあり、食品購入目的での来店客を非食品購入につなげる方策を検討する必要があるだろう。国内市場の深耕による「プライマリー・ストア化」を図るとともに、中長期的には海外市場も含めた成長戦略が求められると考えられる。

キーワード: ドラッグストア、品揃え、食品、COVID-19、経営戦略
ドラッグストアの新規顧客からのロイヤルティ形成要因について

本藤 貴康
東京経済大学 経営学部 教授

 購入金額という行動的ロイヤルティに焦点をあてて、全国の地域密着型ドラッグストア企業のID-POS分析に基づいた、新規顧客の購買行動についての研究成果である。新規顧客のなかで翌年離反客と翌年継続客では買上カテゴリー数に顕著な差が生じている。新規顧客の翌年実績については年間購入金額以上に買上カテゴリー数の影響力が大きい。買上カテゴリー数は店内動線長に比例し、それぞれのカテゴリーの個々の需要発生時に来店目的を生じさせる。ロイヤルティ形成に貢献するカテゴリーとしては、習慣的消費をともなうカテゴリーのほかに、地域の業種店減少という背景要因から、業態店でも限定的な品揃えにとどまっているようなカテゴリーによる来店誘導の重要性が高まっている。

キーワード: ストア・ロイヤルティ、顧客購買行動、ドラッグストア、買上カテゴリー数、新規顧客
ドラッグストアにおけるポイントカードの知覚価値とその要因

中川 宏道
名城大学 経営学部 准教授

 本研究では、ドラッグストアにおけるポイントカードの知覚価値を決定する要因として、ポイントカードの設計要因(ポイントの提供方法とポイント特典の内容の要因)と消費者要因について検討をおこなった。その結果、前年や前月の購買実績に応じて顧客をランク付けする顧客階層型、ある決められたポイント数までポイントを貯める必要がある非連続型、値引きではなく景品などを提供する間接的特典はポイントカードの知覚価値を低くすること、提携型(Tポイント)はポイントカードの知覚価値を高めることが明らかになった。消費者要因としては、ポイント使用経験のない顧客はポイントカードの知覚価値を低くすること、入店前にポイント使用決定をする顧客ほどポイントカードの知覚価値が高いことなどが明らかになった。

キーワード: ポイントカード、ロイヤルティ・プログラム、ドラッグストア、顧客階層、顧客満足
2022年度ドラッグストア研究会のご案内

リーダーの戦略

人が中心のM&A・DX化・売場&商品開発

池野 隆光氏
ウエルシアホールディングス株式会社代表取締役会長/
日本チェーンドラッグストア協会会長

聞き手◎中村 博
公益財団法人流通経済研究所 理事/中央大学大学院戦略経営研究科 教授

視点

温度が消費者に及ぼす影響を再考する

石井 裕明
青山学院大学 経営学部 准教授

資料紹介

海外の流通&マーケティング

流通データ

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No.555 | Vol.53 No.6(2022年3月発行)

特集 海外小売業の顧客接点戦略

特集にあたって

神谷 渉
公益財団法人流通経済研究所 客員研究員/玉川大学 経営学部 准教授

オムニチャネル化するアメリカの小売業

若林 哲史
株式会社エレガント・ソサエティ 代表取締役社長

 100年に一度のパンデミックとなったコロナ禍は、人々の生活に大きな影響を与えた。リモート勤務やオンライン学習が取り入れられた結果、巣ごもり現象が起こり、新しいビジネス機会も生まれている。小売業界では、テクノロジー導入が急速に進み、顧客サービスや生産性改善に、AIやアルゴリズムが使われ始めている。一方、外部との接触が減っているにも拘らず、人との結び付きが望まれ、地域貢献の姿勢がより尊ばれる傾向が目立ってきた。企業に対しても社会的な責任が求められ、各社、目的を明確にした経営体制を整えつつある。

キーワード: オムニチャネル、リテール・プラットフォーム、ミレニアル世代、エンバイロメンタル、ソーシャル
フランスの食品スーパーにみるclick & collect
 -<drive>がもたらす消費者の利便性向上と企業戦略-

森脇 丈子
流通科学大学 人間社会学部 教授

 フランスの食品スーパーでは、注文品を自分の車で店舗まで受け取りに行くclick&collect方式の買い物が成長している。現地では、<drive>と呼ばれるこの購買方式は、消費者にとっての買い物の利便性を広げ、企業にとっても収益の柱に育てるべく投資がなされてきた。さらに、コロナ禍の影響により、今までは<drive>を利用していなかった消費層にも広がりがみられる。郊外にハイパーマーケットを展開するE.Leclerc(ルクレール)が<drive>市場の売上高のおよそ半分を握っているが、都市部では中小規模店舗を数多く有する他の大手スーパーによる徒歩でのclick&collect(drives piéton)も急速に広がりをみせている。

キーワード: click&collect、<drive>、フランス、ハイパーマーケット、宅配
顧客接点から見る中国EC成長モデルの転換-アリババとテンセントの戦略-

李 雪
公益財団法人流通経済研究所 特任研究員

 中国のEC市場では、ライフスタイルや価値観の多様化、顧客獲得コストの急増などを背景に、トラフィックとコンバージョンに依存した集中型ECの成長が減速している。一方、SNS、ライブや動画などのコンテンツを活用し、顧客を中心に有効なコミュニケーションを継続的に取りながら、リピート率やロイヤルティを向上させる脱集中型ECが急速に成長している。これに着目したEC大手のアリババやSNS大手のテンセントは、それぞれDtoC、プライベート・トラフィック戦略を打ち出し、メーカーなどの出店企業もしくはパートナーとともに、顧客関係を強化しながら、新たなEC運営形態に挑戦している。

キーワード: EC、脱集中型、顧客接点、DtoC、プライベート・トラフィック
中国における生鮮食品ECの展開と企業間連携
 -ケイパビリティの視点からみたアリババの事例研究を中心に-

閻 湜
専修大学大学院 商学研究科 博士後期課程

渡辺 達朗
公益財団法人流通経済研究所 理事/専修大学 商学部 教授

 現在、中国の少なくとも都市部の消費者にとって、EC(電子商取引)が生鮮食品の主要な購買チャネルの1つとなっている。生鮮食品ECが注目されはじめたのは2005年頃で、2011年~12年には大手EC企業が生鮮食品流通に参入してきたが、当初市場の成長は緩やかなものであった。それが、2019年頃から成長軌道に乗り、コロナ禍を経た現在、さらに市場の拡大が続いている。本研究では、生鮮食品EC市場と業界の特徴について整理したうえで、市場の担い手、生鮮ECの展開に必要な能力、能力育成・獲得をめぐる企業間連携に注目して検討する。

キーワード: 中国EC企業、生鮮食品EC、ケイパビリティ、アリババ、プラットフォーマー
小売業の顧客接点戦略におけるPBの役割-海外小売業の事例から-

神谷 渉
公益財団法人流通経済研究所 客員研究員/玉川大学 経営学部 准教授

 小売業の顧客接点戦略において、マーチャンダイジングの分野に着目し、顧客接点の多様化が進む中でプライベートブランド(PB)が果たす役割について検討した。まず、欧米の大手小売業において近年PBがどのように変化してきているのかを確認するとともに、ECにおけるPBの導入やD2Cブランドについて概観した。次に、これらの状況をGielens et al.(2021)が示したスマートPL(Private Label)の考え方に基づいて整理を行った。その結果、小売業の顧客接点が多様化する中でPBが果たす役割は高まっており、PBに求められることとして、イメージ志向型への対応の必要性が高まっていること、製品開発における企画者の存在が重要になっていること、価格訴求よりもブランドとしての独自性が重要になっていることが示唆された。

キーワード: プライベートブランド(PB)、EC、D2C、ウォルマート、テスコ

リーダーの戦略

経営は人、組織も人で変わる

藤田 元宏氏
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社 代表取締役社長 兼
イオン株式会社 執行役副会長

聞き手◎中村 博
公益財団法人流通経済研究所 理事/中央大学大学院戦略経営研究科 教授

視点

パンデミックとブランド・マネジメントを考える~Brand Coolness~

菅野 佐織
駒澤大学 経営学部 教授

資料紹介

海外の流通&マーケティング

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No.554 | Vol.52 No.5(2022年1月発行)

新春対談

企業革新と流通

青山 繁弘
公益財団法人流通経済研究所 理事長

上原 征彦
公益財団法人流通経済研究所 理事・名誉会長/株式会社コムテック22 代表取締役

特集 ECが流通と消費者にもたらす影響と変革

特集にあたって

祝 辰也
公益財団法人流通経済研究所 上席研究員/コンサルティング・リサーチ ビジネススクール 統括

ECの浸透状況と今後に関する基礎的検討

根本 重之
公益財団法人流通経済研究所 理事

後藤 亜希子
公益財団法人流通経済研究所 主任研究員

 経済産業省「電子商取引に関する市場調査」は2020年のEC化率が8.1%になったと推計している。だがEC化率は品目によって大きな差があり、食品はまだ3%台にとどまっており、開拓レベルの低い最大市場となっている。
総務省「家計消費状況調査」によると「EC利用世帯当たりEC支出額」はここのところ増加幅が縮小する一方、「EC利用世帯の割合」は上昇し続け、新型コロナウイルス感染症下で50%を超えるに至った。したがってEC支出の増加は、前者より後者の要因によるところが大きい。そして現在5割程度のEC利用世帯の割合はまだ高まるであろうから、それだけでもECはさらに成長すると考えられる。他方、「EC利用世帯の消費支出に占めるEC支出の割合」はここ数年11%程度であまり動いていないことから、状況が変わらなければ、EC利用世帯の割合が100%になったとしても、全世帯ベースの消費支出に占めるEC支出の割合はそのレベルを超えないと見ることもできる。

キーワード: EC市場規模、EC化率、EC支出総額、EC利用世帯、家計へのECの浸透率
消費者の購買先選択におけるECの位置付け

祝 辰也
公益財団法人流通経済研究所 上席研究員/コンサルティング・リサーチ ビジネススクール 統括

 消費者の購買先選択におけるECの位置付けを明らかにするために、食品、日用品、衣料品、家電製品の4つのカテゴリーについて、Web消費者アンケート調査を行った。購買頻度が高い食品、日用品では店舗アクセスの容易さから実店舗業態の利用率が高かった。購買頻度の低い衣料品や家電製品では、「店に行く必要がない」という理由からEC業態とくにEC専業業サイトの利用率が高かった。しかし衣料品、家電製品共にEC専業サイト利用者の40%以上が実店舗業態を併用しており、実店舗を利用する理由として「商品の実物を見たり手に取ったりできる」こと、「商品についての質問や相談がしやすい」ことが挙げられた。

キーワード: EC、実店舗業態、Amazon、楽天、業態利用
大手総合ECサイト利用事業者の状況調査

山﨑 泰弘
公益財団法人流通経済研究所 常務理事

高橋 周平
公益財団法人流通経済研究所 研究員

 新たな販売チャネルであるECの中で、中小事業者が利用する大手総合ECサイトの役割は大きいと考えられる。本研究では、EC事業者に対するインターネット調査を行い、成功事業者の要因を検討した。その結果、複数の総合ECサイトを併用することの有用性が確認された。また、成功事業者は総合ECサイトが提供する各種サービスの利用率が高く、事業戦略として、品揃えの差別化を図り、総合ECサイトを積極的に活用する傾向がみられた。

キーワード: Eコマース、EC化率、総合ECサイト、中小事業、品揃え
マスプロダクトが売れない時代のD2C~既存企業のD2C転換への示唆~

沖 賢太郎
株式会社KDDI 総合研究所 フューチャーデザイン1部門 事業環境リサーチG シニアアナリスト

 D2C(Direct to Consumer)とは、ブランドが顧客とダイレクトな関係を持つビジネス形態であり、直販とダイレクトコミュニケーションが特徴だ。増えつつある既存企業のD2C転換で優先課題となるのは既存流通との衝突の克服であり、2つのアプローチを紹介する。1つは、ブランドへの強い共感を集めての「突破型」D2C転換であり、NIKEが好例だ。もう1つは、ゼロベースで価値を刷新する「衝突回避型」D2C転換だ。流通の制約を考えず、本来提供したかった価値に立ち戻り商品を構想する。流通の作法から外れる商品は、小売店には扱いづらく正面衝突は起きづらい。歴史がない新興D2Cは世界観の構築に苦慮する一方、既存企業の持つ歴史が世界観の源泉になり得る。昔から続く価値観や創業理念などへの原点回帰が既存企業のD2C転換のスタート地点になるだろう。

キーワード: D2C (Direct-to-Consumer)、直販、顧客理解、世界観、共感
小売市場規模の1割にも満たないEコマースが、日本の小売全体に及ぼす影響とは

望月 智之
株式会社いつも 取締役副社長

 Eコマース(以下、EC)の重要性は、小売業を営むものであれば最早無視できない存在になったと言える。しかし、日本における小売市場全体にしめるECの比率は、経産省による令和2年度の調査で約8%。この数字だけを見れば、小売全体の規模から見て1割にも満たないECの存在が、なぜここまで大きくなっているのだろうか。その理由を紐解くと、技術の発達やその利便性だけでなく、消費者や買い物行動そのものの変化に気付くことができる。そんな消費者・買い物の変化と、ECが担う新たな役割について日米の事例を交えて紹介する。

キーワード: EC化率、デジタルシェルフ、買い物プロセス、スモールマス、サステナビリティ
Amazon EffectとWalmartのDX 対応戦略

中村 博
公益財団法人流通経済研究所 理事/中央大学大学院 戦略経営研究科 教授

 「破壊的イノベーション」をともなうネット通販が成長している。Amazonはその代表格であり革新的なDXを展開し急速な成長を遂げている。わずか、26年で世界第2位の小売業になり、世界1位のWalmartに迫っている。この急速な成長は、いわゆる「Amazon Effect」と呼ばれ、既存小売業は苦境にたたされている。例えば、長く小売ビジネス市場を牽引してきたSearsも倒産した。既存小売業は、そのビジネスモデルを変革せざるを得ない状況にある。既存小売業の代表格であるWalmartは自社が有する実店舗のビジネスを、DXを活用しながら「再定義」する戦略で業績をあげている。本論は、Amazonのビジネスモデルを「弾み車の理論」から検討し、既存小売業に与えるAmazon Effectを確認する。そして、既存小売業の対応戦略としてWalmartの「両利き経営」について検討している。

キーワード: 破壊的イノベーション、Amazon Effect、弾み車、両利き経営、店舗の再定義

資料紹介

海外の流通&マーケティング

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