コラム

2018/3/2
利用者からみた宅配便の課題
後藤 亜希子
公益財団法人流通経済研究所 主任研究員

宅配便のつらい状況を実感
 ネット通販によって増えた物量の多さや不在等による再配達の多さのために、宅配業者が大変な思いをしている、といったニュースに接する機会が最近とみに増えた。
 先日、マンション入口のインターホンが鳴ったとき、私は出かける寸前だったのだが、鳴らしたのは宅配ドライバーで、「宅配ロッカーがすぐに埋まってしまうので、できれば今しばらく部屋で待っていて、荷物を受け取ってほしい」とのことだった。他のマンションでも宅配ロッカーが足りなくなっている状況は同じだと聞く。
 日に何度も、同じ宅配会社のドライバーが、台車に山のように荷物を積んでマンション入口でインターホンを鳴らし続ける光景を目にする。それをみるといつも、子どもの時に父から聞いた「シーシュポスの神話」が頭に浮かんでしまう。朝と晩では違うドライバーだと願いたい。

混む時期はさらにつらい
 年末年始の帰省の際、実家宛にも実家からも宅配便で荷物を送った。実家から送る荷物は2個口になった。荷物を引き取りに来てもらって現金で支払おうとしたところ、ドライバーが「おつりの1円玉がないのですが」と言う。営業所から離れているし、届ける荷物もたくさん車に積んであるし、足りない硬貨を取りに戻る暇もないのかも知れないと気の毒に思った。
 実家から発送した翌日、届いた荷物は1箱だけだった。ドライバーは「2個口と表示されているが、1箱しか営業所に届いていない」と言い、もう1箱の行方についてはわからなかった。サービスセンターの連絡先を検索しコンタクトをとったところ、「もう1箱が今どこにあって、いつ届くかは、システムでは確認できない」とのことだった。宅配便の追跡システムは結構進んでいるものと思っていたので、驚くとともに不安になってしまった。
 結局その翌朝「もう一つの荷物が営業所に届いた」と連絡があり安堵したのだが、これまで長年利用してきて一度もなかったようなことが重なった。これからは混雑する時期の利用はなるべく避けようと決めた。

多少の値上げでは状況は好転しない
 昨年から今年にかけて宅配便各社が配送料を値上げしたものの、それが物量の抑制にまではつながっていないのだと今回感じた。また、料金に差があれば、安い方の会社に荷物が流れてそちらの物量が増え、現場がさらに疲弊してしまうおそれがある。時給を上げても必要な人数を確保できない状況は、一向に改善していない。宅配業界全体で、荷物の配送日や配送時間の指定枠を、一旦今より思い切って緩めることを考えてみてもよいのではないだろうか。
 あれだけ忙しそうな現場の人たちの手取りにつながるのだったら配送料値上げもやむを得ないと思うが、通販などの配送料は、やはり利用者からきちんと通販事業者が徴収し、それを適正に宅配業者に支払うべきだとあらためて感じた。フリマアプリ等の個人間取引においてもそれは同様である。
 昨年秋頃から、通販事業者によっては、送料改定、また配送料無料となる注文金額ライン引き上げの動きも見られるようになってきた。だが、無料枠を残してしまうと、結局消費者はその枠以上に買い物することで、送料を払わない行動をとるだろう。
 そして筆者の実家のような田舎に行くほどトラックの走行距離は長くなるから、配送効率が下がってしまう。配送だけでなく、センターでの仕分けに必要な人材もすでに足りていないために、筆者が経験したような釣り銭不足や片方の荷物の未着も生じるのだろう。そのたびに問い合わせが来ていたら、コールセンターも顧客への応対に膨大なコストを要することとなるだろう。
 このままでは、インフラとしての宅配が立ちゆかなくなってしまいかねないと一利用者としても危惧する。

急がれる法整備
 そんななか、トヨタ自動車がアマゾン・ドット・コムやウーバー・テクノロジーズなどと提携し、自動運転や電動化技術を用いた移動車両サービスに取り組むと発表した。宅配業者のほか、例えば小売や外食などの事業者が、自動運転車両で、共同で配送できるようになる日も遠くないかも知れず、期待したい動きである。深刻な人手不足がもはや一時的なものではないなか、技術の進歩によって、配送の現場の厳しい状況が一刻も早く改善することを願うのみである。
 国としても、自動運転車両やドローンなどによって無人で配送するしくみが全国で実施できるように規制緩和、法整備を進めることが、喫緊の課題である。