コラム

2011/5/27
「レジャー減少」の影響を考察する―― 震災後の消費マインドの変化
石川友博
流通経済研究所 研究員
【GWの消費動向】
連携協議会の発起人15社
出所:
日本経済新聞 2011年5月10日朝刊 「東北、GW客2〜9割減」

 震災後、レジャーを楽しむ人が減少している。たとえば、ゴールデンウィークの個人消費動向をまとめたメディア報道によると、JTBでは国内、海外旅行とも申し込みが約1割減少、JR東日本の利用者は27%減となった。経済産業省の調査(※1)によれば、小売・サービス25社の3月売上実績は、食品・日用品、災害用品で10%前後のプラスとなった一方、それらを除いた消費関連では10〜20%前後のマイナスで、とくに旅行業やホテル、ゴルフ場などの売上減少が目立った。また、震災1ヶ月後の消費者意識をめぐって、3割強の消費者が「家で過ごす時間が増えた」との考察もある(※2)。交通機関が現実に停止するリスクが認識され、人々が移動や外出を控えた結果、一部の近隣娯楽施設の業績が好調だったものの、全体としてはレジャー関連の消費が減少しているといえる。

 レジャーを楽しむ人が減り、移動、旅行を控える動きが広がることによる、経済的影響を考えてみたい。その一つの手がかりとして、内閣府が発表する国民経済計算の家計最終消費支出の目的別の数値に注目すると、2009年で交通(26.7兆円)、娯楽・レジャー・文化(65.8兆円)、外食・宿泊(20.9兆円)となっており、この合計額113.4兆円が、レジャー、移動及び旅行を控える影響を強く受ける可能性の大きい部分であるといえる。この113.4兆円という規模は、消費支出全体の35.3%、国内総生産の21.8%に相当する。消費構造が変化し、娯楽・レジャー・文化への支出は、1980年から2009年にかけて大きく増加しており、レジャーの減少が経済に与える影響は少なくない構造となっていることを確認することができる。

【家計の目的別最終消費支出の構成】
連携協議会の発起人15社

※出所:内閣府『平成21年度国民経済計算』より作成。
    平成12暦年基準の実質家計最終消費支出の金額を構成比にしたもの

 では、このレジャーに代わる消費としてどんなものが広がってくるだろうか。節電商品や暑さ対策商品の売上が好調であることや、「家飲み」の広がりを受け、小売業が酒類やおつまみの売場を充実させる動きも伝わっている。そんな中、筆者は習い事市場の拡大に注目している。語学テキストの売上が急増しているほか、カルチャーセンター大手が、需要の盛り上がりをにらんで、大規模な広告宣伝活動を展開するといった動きが伝わっている。家や近隣で過ごす時間が増えたことに加え、未曾有の事態に直面することによって生じた価値観の変化が、習い事需要の拡大につながっていると考えられるが、今後、企業の節電対応によって時間短縮勤務や在宅勤務が進み、自由時間が増えれば、こうした習い事市場がさらに拡大する可能性がある。

 習い事をする人は消費意欲が高いとされ、習い事をする人の輪が広がると、関連分野を中心として支出全体が底上げされる可能性がある。そういう観点から、流通業としても、地域のこうしたニーズを持つ人たちの受け皿となる参加型の講座を開催したり、学習意欲や自己実現意欲の高まりに対応した店頭や販売促進での取り組みを行うことを提言したい。たとえばスーパーマーケットであれば、栄養バランスのとれた料理を学べる講座などの体験型の企画、健康促進につながるメニュー提案などの情報発信の強化、習い事に関連する商品のMD強化などである。こうした取組が広がれば、習い事市場の拡大を後押しし、習い事市場の拡大によって生まれる需要を取り込んでいくことにつながるだろう。成長意欲、勉強意欲への働きかけを、店頭や販売促進でどのように取り入れられるか、考える価値は大きいと思う。

 筆者の地元の英会話スクールでも、4月以後生徒が増加し、活況であるという。習い事需要の拡大を、一つの前向きな変化として注目したいと思う。

※1 経済産業省「東日本大震災後の産業実態緊急調査」
http://www.meti.go.jp/press/2011/04/20110426005/20110426005.html
※2 ボストンコンサルティンググループによる調査「BCG リビルド・ジャパン・イニシアティブ:震災後の消費者意識調査」
http://www.bcg.co.jp/documents/file75761.pdf

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